保健医療学研究科(博士後期課程)修了の山田さんのケースレポートが『Acupuncture in Medicine』に掲載されました

2024年08月05日 社会貢献・研究

この度、本学大学院・保健医療学研究科(博士後期課程)を修了した山田隆寛さんのケースレポートが、Sage Journalsが発行する『Acupuncture in Medicine』に掲載されました。
内容は以下のとおりです。

原著論文

Effect of acupuncture on corrugator muscle activity in temporomandibular joint disorder: a case report
(皺眉筋活動を指標とした顎関節症に対する鍼治療の効果:ケースレポート)

【掲載誌】Acupuncture in Medicine
【著者】 山田隆寛、矢嶌裕義髙山美歩、今西好海、Judith M. Schlaeger、髙倉伸有

 

博士後期課程での研究のポイント

1.痛みの治療には、主観的な痛みだけでなく、客観的な指標を用いた多角的な評価が望まれています。そこで私たちは、筋電図を使って、痛みが生じるときの皺眉筋(すうびきん/しゅうびきん:眉間(みけん)に皺(しわ)をよせる筋)の活動を測定することにより、「痛みの客観的な評価」が可能であることを発表しました。(以前の記事はこちら

2.そこで、本学附属鍼灸センターに来院した顎関節症の患者様に対して鍼治療を行い、その前後に、咬筋(こうきん:食べ物を噛む際に顎を動かす筋。顎関節症の際に特徴的な痛みが生じる部位にあたる)の部分を、圧迫刺激を与える機器を用いて一定の圧で圧迫したときの、皺眉筋の活動の大きさ(客観的指標:非圧迫時の活動に対する割合)と、患者様の自覚的な痛みの強さ(主観的指標:ビジュアル・アナログ・スケール=最大の痛みを10㎝として痛みの強さを10㎝のスケールで表す)を記録し、それらの関係性を調べました。

3.鍼治療は、咬筋、側頭筋(そくとうきん:咬筋と同じく顎を動かす筋)や、肩から首にかけて硬く緊張した僧帽筋(そうぼうきん)、頭板状筋(とうばんじょうきん)のツボに鍼を刺して15分間置く置鍼療法(鍼を刺したままにしておく手技)を行いました。

4.鍼治療によって、咬筋部への圧迫時の痛みは、ビジュアル・アナログ・スケールで5.8㎝から0.6㎝に著明に減少するとともに、皺眉筋活動の大きさも199.6%から38.5%へと明らかな減少が見られました。

5.この結果は、従来は患者様が感じている痛みの強さだけで評価していた痛みを、皺眉筋活動の大きさでも表すことができたことを示しており、主観的のみならず、客観的にも「鍼治療が顎関節症の痛みに対して効果があった」ことを裏付けるものになったと考えます。

 

 

関連サイト

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