看護学科 シンガポール研修2023 現地レポート
2023年03月04日 国際交流
看護学部 看護学科ではシンガポール国立大学(NUS) 看護学部と学生間交流協定を締結しています。
コロナ禍により2019年以降、NUSを訪問することも、NUSの学生たちが本学に来ることもできていませんでしたが、ついに、研修旅行が再開できることになりました。
3月3日より学生7名が教員1名の引率のもとNUSを訪問しています。現地からのレポートをお伝えします。
1日目 移動日
飛行機が30分ほど遅れましたが、無事到着しました。
空港ではNUSの学生2名が出迎えてくれました。7月には本学に研修に来る予定だそうです。
夕食は歩いていけるフードコートでとりました。
2日目(2023/3/4)
午前中はNUSのオープンハウスに参加しました。
学部の多さ、UNIVERSITY TOWNの規模に学生たちは圧倒されていたそうです。
看護学部のブースでは、今年7月にTAUに研修予定の学生さん達が2名、素敵な笑顔で出迎えてくれました。
新たに増設されたシミュレーションラボでは、救急場面と創傷処置のリアルなシミュレーションを体験させてもらいました。
教員のDebbie氏はなんと、10年前にNUSからTAUに研修に来たグループメンバーのうちの一人だったのです。TAUの学生を優しく温かく迎えてくださりました。
午後は、National MuseumとNational Galleryに行き、シンガポールの歴史と文化に触れる機会を持つことが出来ました。3月にしては珍しい雨続きの毎日だそうです。
3日目(2023/3/5)
シンガポールの文化に触れた1日だったようです。
学生たちの言葉をご紹介します。
“ユニバーサルスタジオシンガポールに行きました。
身振り手振りで英語を使って学生だけでシンガポールを散策することができました。
日本とは違うハードな乗り物も沢山あり、とっても楽しかったです。”
”カトン地区に行きました。
わたしたちがいるハーバーフロントと比べてプラナカンの伝統的な建物や街並みを感じることができました。英語だけではなくその他の言語などを話している方も多くいて、シンガポールの多様な文化について肌で感じることができました。”
4日目(2023/3/6)
いよいよNUSでの研修です。
ウェルカムセッションでは、慈恵会医科大学と香港大学の方々と一緒でした。
スイーツとお飲み物で出迎えてくださいました。
看護学部のLubna先生より、シンガポールのヘルスケアシステム及びNUS看護学部の教育についてご講義いただいた後、TAUの学生と慈恵会医科大学による日本文化、ヘルスケア文化、学生生活についてのプレゼンテーションが行われました。
解剖学教室では、献体されたご遺体から多くの学びをいただきました。
動脈と静脈の硬さの違いを実際に触れて学ばせていただいたり、肝臓、脾臓、すい臓などの臓器の位置を確認したり、泌尿器系のつながりや小腸と大腸の区別などについてもZakir先生が詳しく説明してくださいました。
解剖は1年生の科目で、1年かけて、講義→ミニレクチャー(復習)→解剖学教室での演習、という一連の流れで学ぶそうです。
シンガポールの中でも、解剖学教室で実際のご遺体から学ぶことが出来るのはNUSだけだと、Zakir先生は誇らしげでした。
学生たちは、とても熱心に積極的にご遺体に触れ、Zakir先生の説明を聞いていました。
午後は、シミュレーションラボの見学を行いました。
一般病室、ICU、OPE室、小児科、など様々な部屋が用意されており、タスク教育用のシミュレーターも多様にありました。
VR教育も取り入れており、解剖学VRを体験させていただきました。看護学部ではまだ1教科のみの導入だそうです。
5日目(2023/3/7)
St. Lukes Eldercare Senior Care Centreを訪問し、施設長のトニーさんより説明を受けました。
公共のデイケア施設で80人の利用者の方がいるそうです。(そのうち77人が中華系、3人がマレー系の方)
この施設では、高齢者が(どんな小さなことでも)何かを達成すること、そしてそのことによって幸せを感じてもらえることを何よりも大切にしており、それが出来るように工夫を重ねてアクティビティのメニューを考えたり、ボランティアの人がコミュニケーションを取りやすいように小さな自己紹介カードを席に貼っておいたり、といった様々な工夫をしています。
高齢者の方が話すことの重要性を考慮にいれ、ボランティアを積極的に受け入れています。見学の間も大学生がお話していました。
認知レベルと個別性を考慮した、個別のケアプラン(Individual Care Plan)を作成して受け入れているそうです。
国策としてHealth SDGsを掲げ、GP(General Practitioner)制を取り入れ、医師は薬の処方と一緒に運動の処方もするようになったそうです。
この施設でも午後には理学療法と作業療法の時間が組み込まれています。大半の方が中華系でしたが、中にはマレー系の方も数人いて、食事はイスラム教のハラル食で統一してあるそうです。食品衛生法が厳しいので、外注だと言っていました。
日本同様、バスによる送迎があるそうです。「お年寄りの瞳が輝くように」という言葉が印象的でした。
夜はNUSが夕食に招待してくださいました。
かつてTAU留学に来たDebbie Tan先生、Zakir先生(医師、元心臓外科医)、Lubna先生(NUSの卒業生)とNUSバディの皆さん一緒にチキンライスのお店でご馳走していただきました。
TAU学生とバディ達は、意気投合し大盛り上がりでとても楽しそうでした。
Zakir先生が、「TAUに行った学生たちから、とても親切にしてもらえたと聞いて、僕たちもそうしようと思ったんだ。」とおっしゃっていました。
6日目(2023/3/8)
6日目はNUSで講義や演習に参加しました。
午前中は、Rooma先生による生理学(泌尿器)の少人数授業でした。
20名ほどの1年生と一緒に授業を受けました。
Rooma先生は、「一日に作られる原尿は計算上180,000mlになるけど、そのまま排泄されたらみんなおむつしなければ間に合わないわよね!どうする??」などとユーモアを交えて、一人一人に問いかけて、1年生が興味を持つように教える姿が印象的でした。TAUの学生たちは、熱心にノートを取り、1年生の時に自分たちが学んだ知識と照らし合わせていました。
午後は、2年生の演習科目「病態生理・薬理学と看護実践Ⅱ」に参加させていただきました。テーマは、創傷管理でした。
10名弱のグループに1人の先生が付いて少人数制で演習を行っていました。
創傷のアセスメント方法、創傷治癒の段階、抜糸方法などについて説明されました。
ケアの根拠を丁寧に説明していました。一通りの説明が終わったのち、2~3人のグループに分かれて、ベッドサイドにてシミュレーター(人形)を用いた創傷処置の技術演習が始まりました。
TAUの学生達も一人ずつグループに参加させていただき、真剣に技術演習を行いました。
どのグループの学生さん達もフレンドリーで、異国から来た看護学生を喜んで迎え入れてくれました。
明るい笑顔で演習を進めていく看護学生さん達でした。演習担当の先生方もまた明るく温かく学生達を迎え入れてくださいました。
TAUの学生達は演習の見学以上の学びと思い出を得ることが出来たことでしょう。
7日目(2023/3/9)
午前中は130年の歴史を持つKwang Wai Shiu Hospitalを見学しました。
long-term care(長期療養型、老人ホームと慢性期病院)の役割を担う病院です。
看護師不足が深刻で、フィリピンやミャンマー、タイからの看護助手が看護を支えています。
一人の学生が「日本の未来もこうなるのでしょうか?」とつぶやき、これからの日本看護を担う学生の洞察力が頼もしく思えました。
看護部長が「老人ホームというと死ぬまでの間入るところ、と捉えられがちだけど、そうではないのよ。ここは高齢者が価値のある人生を過ごすところなのよ」、「心のない看護師には来てほしくないの。高齢者、特に認知症の方は、人の心を鋭く見抜くのよ。若し、心のない人が来たら、高齢者は心が乱されてしまうし、その看護師だってやりがいがなくてバーンアウトしてしまうわ。」と繰り返しおっしゃっていたのが印象的でした。
午後は、Singapore General Hospital (SGH)Museum(シンガポール総合病院博物館)へ行きました。シンガポールで最初にできた病院で、その歴史について、アメリアさんが多民族・他宗教・植民地支配・日本軍の侵略と暴挙・看護師の歴史などとともにゆっくりと分かりやすい英語で解説してくださいました。
アメリアさんは、日本のシンガポール侵略及び日本軍によるSGHの3人の医師の拘束・拷問について述べるときにはうっすらと涙を浮かべていました。しかし、「これはあくまでも史実として述べるだけよ。ただそれだけ。」と私たちを優しく気遣ってくださいました。
かつてはこの病院の看護師として長年勤務していたアメリアさんは、最後に「この総合病院は、News Weekで世界で9番目に良い病院と評価されているのよ。」と誇らしげに述べていました。
学生達は今のシンガポールを楽しみつつ、この国の辿った歴史にも触れる機会を得ることが出来ました。未来を担う看護師の卵たちは、きっとこの経験をこれからの看護に生かしてくれると思います。
8日目(2023/3/10)
午前中にNUS所有のBABA HOUSEの見学に行きました。
1895年に建てられたこの建物は、20世紀初頭にプラナカン・チャイニーズであり海運王であったウィ氏に購入され1980年まで実際に住んでいたそうです。
2006年にアグネス・タン氏による多額の寄付によりNUSがこの歴史的建造物を購入し、NUSの建築学科により修復・改築が行われ、2008年にNUS BABA HOUSEとして見学できるようになっています。
日本語ボランティアガイドの方が、家の造りや当時の生活などについて、文化的背景を踏まえた説明をしてくださいました。屋内外に風水が取り入れられており、至る所に「子孫繁栄」「富」など縁起の良い装飾が施されていました。ご先祖様を敬う気持ち強く、仏壇には親孝行の物語の彫刻が施されていました。
ガイドの方の詳しい説明のお陰で、学生達のシンガポールへの理解がまた少し深まりました。
BABA HOUSEから帰って後、WRAP-UP SESSION(修了式)が行われました。
ひとりひとり終了証と看護学生の演習着(スクラブ)を来たミニNEDDY(NUS看護学部のマスコットキャラクター)のぬいぐるみをいただきました。
シンガポールは多民族国家であり、子供のころから一緒に教育を受けていることや、看護師になってもスリランカやタイ、フィリピンなどの看護師と働く機会が多いことから、文化的感受性が磨かれている機会に恵まれています。
Fui Ping先生は、「文化的感受性はとても大切です。これを機にずっと連絡を取り合っていってね。みんな看護の道を歩んでいくのですから」とメッセージをくださいました。
9日目(2023/3/11)
NUSでの研修が終了した翌日、NUSバディ達との最後交流を楽しみました。
バディの親戚のおすすめのお店でチリクラブを食べ、マリーナベイサンズの近くの公園(Marina Barrage)でピクニックをして過ごしました。
10日目(2023/3/12)
チャンギ空港まで2人のNUSバディが見送りに来てくれました。
7月には日本に研修に来るバディ達もいるので再開を約束し、全員が無事帰国しました。