【研究発表】柔道整復学科 高橋准教授らがウォーキングサッカー試合中の運動強度を明らかにしました。
2020年08月04日 社会貢献・研究
柔道整復学科 髙橋 康輝准教授らの研究グループが国立栄養研究所、日本サッカー協会との共同研究にて、近頃中高齢者の健康増進運動や幅広い年代のプレイヤーが一緒に楽しめるスポーツとして注目されているウォーキングサッカーが身体や心理面に及ぼす効果を報告しました.
研究のポイント
- ウォーキングサッカーの試合はゴルフやウォーキングと同等の中等度の運動強度であった。
- プレー後には楽しさや勝ち負けに興奮する気分が高まっており、身体活動継続のための動機づけになることが示唆された。
- プレー終了後に痛みを訴える者や痛みの箇所が増えることはなく、むしろ減少していた。
- ウォーキングサッカーは安全かつエキサイトする競技性を持った健康運動であることが示された。
背景
サッカーは世界中が熱狂する人気スポーツです.
年齢を重ねてもサッカーを続けたい人は沢山いますが,競技としてのサッカーはフィジカル要素が強いため,高齢者が若者と一緒にプレーするのは難しく,体力の低下を理由にあきらめてしまう人も多いのが現状です.
そこで,安全に楽しめるサッカーとして注目されているのがウォーキングサッカーです.
ウォーキングサッカーは,2011年頃に英国で中高齢者でも安全に楽しめるサッカーとして始まった“歩く”サッカーです.走ることや身体の接触が禁止されているため,運動が苦手な人やサッカー未経験者などの老若男女が楽しめるスポーツとして,活動の輪が拡がっています.
日本でも2014年に公益財団法人日本サッカー協会(JFA)が,全ての人々がサッカーを楽しめるような草の根活動をグラスルーツ宣言として発表し,その一環として2016年4月よりウォーキングサッカーの普及を進めています.
しかしながら,ウォーキングサッカーがどれほどの運動強度になるのか?健康増進効果を期待できるのか?安全性は十分なのか?ということは一般のスポーツのように明らかにされていません.
そこで,ウォーキングサッカーが心理面や身体面への影響を明らかにするための基礎資料を収集しました.
研究手法
JFAが開催するウォーキングサッカーイベントに参加した20歳代から60歳代の成人男女を対象として,ウォーキングサッカー試合時の運動強度,心拍数を測定しました.また質問紙を用いてウォーキングサッカーの試合前後での楽しさや痛みなどの主観的評価を実施しました.
結果
ウォーキングサッカーの運動強度は,4.0-5.5METs(安静に座っている運動強度を1とした場合の4~5.5倍の運動強度)という中強度の運動であることがわかりました.これはゴルフやウォーキングと同等になります.ちなみに競技としてのサッカーは7.0 METsですので,そこまで白熱するものではないのかというと,質問紙では楽しさや勝ち負けに興奮する気分が高まっていました.したがって,ウォーキングサッカーは,身体活動を継続するための内発的動機づけになるのではないでしょうか.あと興味深いことにウォーキングサッカー終了後に痛みを訴える者や痛みの箇所が増えることはなく,むしろ減少していました.つまり,ウォーキングサッカーは,安全かつエキサイトする競技性をもった健康運動であることが示されました.
今後の期待
ウォーキングサッカーは,楽しく安全に実施することができる中強度運動であることから,幅広い年代の健康増進運動として今後益々の普及が期待されます.
本研究に関する問い合わせ
◆国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所身体活動研究部
〒162-8636 東京都新宿区戸山 1-23-1
◆公益財団法人日本サッカー協会指導普及部グラスルーツ推進グループ
〒113-0033 東京都文京区本郷 3-10-15
◆東京有明医療大学大学院保健医療学研究科
〒135-0063 東京都江東区有明 2-9-1
論文情報
体力科学 第69巻 第4号 335-341(2020) DOI:10.7600/jspfsm.69.335
ウォーキングサッカー試合中の運動強度
二宮 友佳,宮下 拓麻,宮地 元彦,松田 薫二,高橋 康輝
Exercise intensity during walking football game
Yuka Ninomiya, Takuma Miyashita, Motohiko Miyachi, Kunji Matsuda and Kouki Takahashi