東京2020応援プログラム「アスレティックトレーナーになるには」開催報告

2018年01月10日 お知らせ

アスレティックトレーナー(AT)に興味のある学生、日本やアメリカの大学、大学院でアスレティックトレーニングを学ぶことに興味のある高校生、大学生を対象にした公開講座が2017年11月14日に本学にて開催されました。 当日は学内外合わせて70名近くの方にご来場いただきました。 プログラムは以下の3部構成で行われました。
  • 第1部(講演) : 日本と海外のアスレティックトレーナー資格と教育制度
  • 第2部(研究発表) : 米国大学院アスレティックトレーニング教育プログラムへの留学の為の最低条件に関する調査
  • 第3部(特別講演) : メジャーリーグのヘッドトレーナーへの道程:高校生の皆さんへのメッセージ
これらの内容の一部を紹介させていただきます。

第1部(講演) : 日本と海外のアスレティックトレーナー資格と教育制度

本講演は保健医療学 鍼灸学科 准教授 アスレティックトレーナーコース担当の泉 秀幸先生が行いました。 日本と海外のアスレティックトレーナー資格と教育制度

アメリカにおけるトレーナーに関連する3つの団体

アメリカのAT資格はATC(Athletic Trainer, Certified)というものです。 アメリカにはNATA(National Athletic Trainers' Association Inc. : 全米アスレティックトレーナーズ協会) という職業団体があり、日本ではATCのことをNATA-ATC(NATA公認アスレティックトレーナー)と呼ぶことが多いです。 以前はNATAが公認資格試験、教育プログラムの認定を実施していましたが、現在は資格認定はBOC(The Board of Certification Inc.)、教育プログラムの認定はCAATE(Commission on Accreditation of Athletic Training Education)が行っています。

CAATEの認定するAT教育プログラムの種類

アメリカのAT教育には次の3つのプログラムがあります。
  • Professional Programs 学士および学士後(修士レベル)でのプログラムで、BOCの行う認定試験の受験資格を得ることが可能です。
  • Post-Professional Degree Programs
  • Post-Professional Residency Programs
Post-Professional Degree Programs と Post-Professional Residency Programsは既にAT資格を持っている人がより深い知識と経験を得るためのプログラムです。これらのプログラムにおいてBOCの行う認定試験の受験資格は得られません。アメリカの学校を探す際には注意が必要とのことでした。

教育プログラムの探し方

アスレティックトレーニングを学べる大学の教育プログラムは CAATEのサイト(https://caate.net/) で探すことが可能です。 また、大学毎の資格試験合格率なども公表されています。

アメリカのAT教育プログラムで勉強するには

大学(院)への申し込みと合格、AT教育プログラムへの申し込みと入学許可が必要になります。また、成績や経済的に問題が無いかの証明書の提出が必要です。具体的にどのような条件をクリアしなければならないのかについては、本学学生が調査結果を第2部でお話しました。

日本体育協会の行うAT養成プログラム

日本では日本体育協会がアスレティックトレーナーの資格認定をしています。 受験資格を得るには2つの方法があります。一つは競技団体等から推薦を受け、日本体育協会の主催する講習会を受ける方法です。もう一つは日本体育協会の認める免除適応コースを持つ教育機関、専門学校などでコースを修了することです。 東京有明医療大学のアスレティックトレーナーコースも免除適応コースとして認められています。 免除適応コースのある学校は全国で57校あります。(2017年時点)

アメリカのATと日本のATの違い

法的根拠

アメリカでは各州にATの法律が存在しています。

医療従事者とスポーツ指導者

アメリカのATは医療従事者(Health Care Professional)として扱われています。 日本のATは公益財団法人の認定するスポーツ指導者資格として位置づけられています。

トレーナーの目指す方へ考えてほしいこと

トレーナーを目指す人から「どうしたら良いか」と聞かれたら、泉先生は次の点を考えて欲しいとのことです。
  • どこで活動をしたいのか?
  • どんな活動をしたいのか?
  • その為には何が必要か?
トレーナーを目指す方はこれらを整理した上で進学先を検討するのが良いのではないでしょうか。今回の講座の内容が皆様のお役に立てば幸いです。

第2部(研究発表) : 米国大学院アスレティックトレーニング教育プログラムへの留学の為の最低条件に関する調査

東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科/アスレティックトレーナーコース4年生の土屋 向日葵さんが発表を行いました。 【研究発表】米国大学院アスレティックトレーニング教育プログラムへの留学の為の最低条件に関する調査

研究の目的

日本人留学生が各米国大学院課程のアスレティック・トレーニング教育プログラム(ATEプログラム)に留学する際に必須とされる最低条件を明らかにすることです。以下の3つについて調査・比較を行いました。
  1. 学力(Grade Point Average : GPA)
  2. 英語力(The International English Language Testing System : IELTS)
  3. 学費(1年間でかかるすべての費用)

方法

対象はCAATEのWebサイトにおいて認定されている大学院とし、各大学院のWebサイトや各大学院の留学生サービスセンターへEメールで問い合わせました。

結果と考察

上記3点すべての情報が得られた、留学生の受け入れをしている大学院は41校でした。

学力(Grade Point Average : GPA)

GPAの最低値はIdaho State Universityの2.5でした。この学校の英語力 IELTSの要求スコアが全体の10番目であり、英語力を重視していると考えられます。 全体の平均値は2.95、標準偏差は0.12でした。

英語力(The International English Language Testing System : IELTS)

英語力IELTSは6の学校が9校あり、全体の平均値は6.5、標準偏差は0.30でした。 9校中6校が入学前に集中英語プログラムを開講していました。積極的に留学生を受け入れる方針があることが考えられます。

学費(1年間でかかるすべての費用)

最も安かったのはTexas Tech University Health Sciences Center の$20444,70(発表時のレートで約231万円)でした。$20,000~$24,999の学校が9校あり、全体の平均値は$30,238、標準偏差は$7,272.7でした。 大学院のある都市の規模が背景にあると考えられ、大都市であるほど学費が高い傾向があるとのことでした。 これまで留学を検討する際に各自が個別に調べなければならない内容をまとめたことは、留学を検討している人にとって有益な情報となることでしょう。

第3部(特別講演) : メジャーリーグのヘッドトレーナーへの道程:高校生の皆さんへのメッセージ

特別講師としてMLB シアトル・マリナーズ ヘッドアスレティックトレーナーのリック・グリフィン氏をお招きしました。 シアトル・マリナーズ ヘッドトレーナー リック・グリフィン氏 当日の詳細な内容はベースボール・マガジン社発行のコーチング・クリニック2018年1月号で4ページに渡り紹介されていますのでこちらもご覧ください。

メジャーリーグでのトレーナー活動

メージャーリーグでは春季トレーニング、通常シーズン、オフシーズンの3つに分けられ、オフシーズン以外には休みが無いそうです。 春季トレーニングの間の主な活動ルーティンは以下のとおりです。
時間 活動内容
朝5:00~6:00 掃除、飲料の用意、トレーニングルームの準備
6:30~9:00 治療やマッサージを行う
9:00~9:30 選手やコーチとミーティング
9:30~12:00 選手は練習を行う
13:00~16:00 試合
16:00~18:00 治療やウェイトトレーニングを行う
18:00~19:00 トレーニングルームの掃除、片付け
19:00 帰宅
通常シーズンも内容は同じで、お昼頃から活動を開始し深夜24時に終了となるそうです。

トレーナーに求められる4つの資質

1.コミュニケーション能力

コーチや選手、チームスタッフなど様々な人とコミュニケーションをとらなければなりません。その為に聞き上手であることが求められます。不調を訴える選手に耳を傾け、コミュニケーションを取ることで新たなことが見えてくることもあります。

2.適応能力

グリフィン氏には18人の上司がいるそうです。一人ひとりが求めることが異なるのでその都度適切に対応することが必要です。自分のやり方を貫くのではなく、周りと適応することが大切です。

3.チームプレーヤーであること

トレーナーはスタッフの一員として働くことです。ケガを予防して常に選手の健康を保つこと。故障してしまった選手の治療とリハビリをし、なるべく早くフィールドに復帰させることをチーム一丸となって行います。

4.『クロックウォッチャー』(時間ばかり気にする人)にならないこと

トレーナーは時間で従事する仕事ではありません。サポートが必要な選手がいれば何時間でも寄り添います。選手が全員帰った時がその日の終業時間です。

チャンスを逃さないこと

グリフィン氏が現在の仕事に至った過程には、恐れずに突き進みチャンスを掴んできたからだといいます。 大学1年生の時に初めてアスレティックトレーナーを目の当たりにし、その翌日には大学のトレーナールームに見学に行ったそうです。 大学院生の時にはたまたま取った電話が「マイナーリーグでトレーナーを探している」という問い合わせでした。グリフィン氏は即「自分が働きます」と答えたそうです。その後4年間の経験を経て、今度は自らシアトル・マリナーズに電話をして20試合に参加する機会を得ました。 シーズン終了後、当時のヘッドトレーナーの後任の募集に応募し25歳の若さで合格しました。 以上の他、グリフィン氏はアメリカでの収入の話や、メージャーリーグで活動する日本人トレーナーの話をしてくださいました。 参加者は皆、真剣な眼差しで話に聞き入っていました。 メジャーリーグのヘッドトレーナーへの道程:高校生の皆さんへのメッセージ 講演終了後は参加者との記念撮影に応じてくださいました。 集合写真 東京有明医療大学では今後もこのような公開講座を開催してまいります。

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