看護の世界

看護学の発展と将来性

ナイチンゲール思想の現代的適用

ナイチンゲールは、19世紀の半ばに看護という職業を創設しましたが、その時代には、「看護師は女性なら誰でも出来る仕事」と 簡単に考えられていました。しかしナイチンゲールは、看護という仕事は、怪我をした人や病気になった人に、単に薬を与えることではなく、 その人の身体内部に宿る自然治癒力が発動しやすいように、生活のあらゆる側面を通して援助し、その人の生命力に力を貸して、生きる力を引き出すことであると訴えました。  現代の看護はこの点を忘れ、もっぱら医師の指示に基づく医療のみに焦点を当てて成長してきてしまいました。

高齢社会を迎え、同時に人とのつながりが希薄になりつつある社会にあっては、高度にして温かな全人的ケアがこれまで以上に求められています。 今こそ、生命を大事にした、しなやか医療を実現させなければなりません。ナイチンゲールが看護に求めたものは、まさに現代において適応されるべきテーマだったのです。

看護は芸術であり科学である

 

100年前にナイチンゲールは、「看護は新しく生まれた芸術であり科学である」と明言しました。看護が芸術であるとは、看護師の手によって創られる技術は、 一回限り、一人ひとりに適したものであるという意味なのです。一回限りのその人にあった優れた技術を生み出すためには、その陰で何百回、何千回という基礎的な技術訓練が必要とされます。 そこに看護師養成の中で今後培うべき大事な事柄が見えてきます。そしてもう一点、看護は優れた科学でもあります。看護実践には必ず何らかの根拠が存在します。看護師の思いや感情だけでは仕事は成り立ちません。いつでも自らのうちに「なぜ?」「だから・・」を繰り返し問いかけ、形にしていきます。看護実践の面白さは、こんなところに存在するのです。

これからの看護職に求められるもの

これまでの日本の看護は、その活動の場の大半を病院という施設に求めてきました。白衣を着てナースキャップを被り、治療処置に当る人という看護職のイメージは、病院看護師たちが作り上げたものなのです。しかし、21世紀の看護は、その活動の場を大きく変換し、地域医療の担い手として進出し始めています。在宅や介護施設で療養している方々へのケアにとって必要な視点は、“その人らしさ”“生活の個別性”を大切にするということです。地域で看護職として働くためには、判断力や実践力において自律性が問われますから、人間として、また専門職として、これまで以上に確かな学習が必要になります。まさに新しい時代の幕明けです。